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HOUSE 住宅購入

中古住宅の選びかた ~最重要項目編その1~

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私がおすすめする中古戸建について、住宅を選ぶときにはどのような観点が必要かを私の目線で解説していきます。

人それぞれ「ここだけは絶対譲れない」、「ここは我慢できる」といった条件があると思います。私は条件がたくさんあって一度では書ききれないので、まず最重要項目から記事にします。

完璧な物件は出てこない

住宅は人それぞれこだわる点が異なります。駅近くが良い人、遠くても静かな環境が良い人、新築が良い人、古くても安い物件が良い人等さまざまです。

よく言われるのは「完璧な物件は現れない」ということです。運よく理想の物件に出会えることもありますが、ほとんどは何かしら妥協をする必要があります。

しかしその妥協は後悔しない範囲のものである必要があります。「ここだけは絶対譲れない」、「ここは我慢できる」というように自分の中で条件を洗い出し、あらかじめリストアップしておきましょう。

日々色々な物件が情報サイトに出てきますが、自分の中で条件を決めておくとすぐ選別できるので効率的です。

難しいのは新築でも中古でも物件は一期一会なことです。気になる物件が出てきたときに、もう少し待てばもっと良い物件が出るかもしれないし、今後これ以上の物件は現れないかもしれないといった悩みはつきものです。良い物件は本当に早く購入者が決まってしまうので、思い切りも大事です。もし理想を求めるなら注文住宅を選択した方が近道です。

私の条件一覧 ~最重要項目編その1~

物件を探す時に「これは絶対避けるべき」という条件があります。資産性が低かったり、安全上のリスクや、近隣住民とのトラブルリスクを抱えているような物件です。これは基本的にはどの方にも当てはまるものだと思いますので、まずは”最重要項目編その1”として紹介します。

再建築不可物件

再建築不可物件とは、その名の通り今の建物を取り壊した後、新たに立てることができない物件です。都市計画区域や準都市計画区域では建築基準法上”接道義務”があり、消防車や救急車が入れるように「4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接している」必要があります。
都市計画法が制定された1968年以前、または建築基準法が制定された1950年以前に建てられたものは、これを満たしていない場合があるのです。それだけ古い物件のため耐震性も低く老朽化も進んでいますが、建て替えられないためリフォームでしのぐしかありません。不人気のため相場の半額程度で買えることもありますが、逆に将来売るとなった時には売りにくい物件です。

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再建築不可物件

建蔽率、容積率超過物件

建蔽率、容積率を超過している物件とは、建築基準法や都市計画法の基準を満たしていない建築物のことで、違反建築物と既存不適格建築物があります。

違反建築物は建築後に建物や車庫を増築したようなものや、新築時の建築確認申請の後にこっそりと大きく作ったものなどがあります。本来は新築後に図面通り作られているか確認する確認検査というものが行われなければならないのですが、費用や手間の関係で2005年頃まではほぼ行われていませんでした。

完成検査が行われないならと、建築確認申請が通った後、施主の希望で大きく作るということが行われてきたのです。昔はそのような違法行為が横行していましたが、現在はコンプライアンス意識も高まり、金融機関は違反建築物に対して住宅ローンの審査を通さなくなりました。住宅ローンが組めないということは、現金一括で購入する必要があるということです。逆に売るときには現金一括の購入者が必要なので、基本的には売ることができないと考えた方が良いでしょう。

既存不適格建築物は都市計画法で建蔽率や容積率が制定される以前に建築されたもので、制限を超過しているものを指します。法律制定以前に建築されたものは現行の制限を受けないとされているため、増築等を行わない限り適法という扱いとなります。住宅ローンを融資しない金融機関も多いですが、融資してくれる金融機関もある物件です。

これらの物件は周辺相場より大幅に安い価格で販売されています。

建蔽率(%) = 建物面積 ÷ 土地面積
容積率(%) = 延床面積 ÷ 土地面積

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左:建蔽率50%、右:容積率80%

旧耐震物件

これまで大きな地震のたびに建築基準法が改正され、耐震基準が強化されてきました。1978年の宮城沖地震を受けて1981年6月に改正され、その改正前後で旧耐震基準、新耐震基準と呼ばれます。その後1995年の阪神・淡路大震災を受けて2000年6月に改正された2000年基準と呼ばれるものが現行の基準です。

旧耐震基準は震度5程度の地震に耐えられる基準で、ほとんど地震に対する考慮をされていません。新耐震基準は震度6強でも倒れない耐震性能を有するとされています。阪神・淡路大震災(震度7)では、旧耐震基準の建物の30%が大破以上、中・小破を合わせると65%程度に達したのに対し、新耐震基準の建物は大破以上が10%、中・小破を合わせても25%程度であったことから、新耐震基準の建物であれば震度6強~7の地震に耐えられることがわかりました。

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阪神・淡路大震災での建築年別の被害状況
出典:国土交通省「大規模地震による建築物等に係る被害について

現行の2000年基準は新耐震基準に比べて接合部の金具取付や偏りのない耐力壁の配置等、よりバランスの良い家づくりを義務化しました。熊本地震(震度7x2回)では、旧耐震基準の木造建物の倒壊・崩壊は28.2%、新耐震基準は8.7%、2000年基準は2.2%でした。各基準の耐震性について、皆さまはどう評価されるでしょうか。

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熊本地震での木造の建築時期別の被害状況
出典:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書

耐震性能は2000年基準が一番良いのは間違いないのですが、旧耐震基準から新耐震基準での改正が大きいため、住宅を選ぶなら新耐震基準以降が必須であると言えます。

また住宅ローン減税は、中古住宅においては新耐震基準の建物であること、または1982年以降に建てられていることが条件となっているので、旧耐震物件では減税を受けられないことも付け加えておきます。

ハザードマップの被災想定区域

ハザードマップは地震や津波、洪水などの自然災害の防災対策として、被災想定区域や避難場所などを示した市町村が作成した防災地図です。

地震であれば東京都が作成している「被害想定デジタルマップ」で30年以内の発生確率70%の都心南部直下地震や、同70~80%の南海トラフ地震での想定震度がわかります。

洪水・浸水であればに各市町村のHPに必ず掲示されていますし、東京都であれば建設局のHPに全市町村のリンクがまとめられています。

東京都建設局洪水ハザードマップ

西東京市浸水ハザードマップ

地震は2011年の東日本大震災を始めとして予知できてこなかった歴史から、発生確率には信ぴょう性を疑う声があります。現在の科学では誰にも予知できないと言い切る学者もいます。ただ日本は活断層の上にあり世界でも有数の地震発生国ではあるので、備えは十分にすべきです。

東日本大震災では、家屋の破損状況を調査したところ、新耐震基準・旧耐震基準といった建物の造りよりも地盤の方が重要だったという報告もあります。地盤の弱い湾岸エリアより内陸の方がお勧めです。

そして近年の自然災害の発生状況から、一番気にすべきは洪水・浸水です。気象庁の発表でも大雨、短時間強雨の発生回数は年々増えてきており、河川の氾濫を主とした浸水災害が増えています。2018年に発生した西日本豪雨ではハザードマップの浸水想定と実際に起きた浸水被害がほぼ一致し、ハザードマップの有効性が話題となりました。

どの自治体のハザードマップでも浸水深によって地図が色分けされていますので、物件を選ぶ際にどの程度浸水が想定されている地域なのか確認が必要です。

浸水は主に河川の氾濫で起こるため、東京で特に浸水リスクが大きいのは多摩川・荒川沿いです。その他支流付近や標高が低い地域も浸水の可能性がありますので、必ず確認するようにしましょう。

私道負担有り

何かとトラブルになりがちなのが私道です。道路には国や自治体が所有する公道と、個人や民間企業が所有する私道があります。公道の補修や整備は国や自治体が行いますが、私道は私道所有者が行います。

道路の補修は表面のアスファルトだけでなく地下の水道管やガス管も必要です。私道の場合、穴の開いたアスファルトや老朽化した管類の補修を私道所有者で行う必要があるのです。当然費用はかかりますし、近隣住民と共有の私道だった場合は、その費用がかかることを共有者に納得してもらう必要もありますし、また取りまとめる人も必要です。本来なら計画的に補修を行いたいところですが、そのような動きができない場合は、水漏れ等の問題が発生してから補修といった悲惨な状況になります。

また住宅の建て替えに水道管やガス管を引き込むため掘削が必要な場合があります。その場合も全ての私道所有者の許可をもらう必要があります。その許可をもらうのが一苦労なため、一般的には不動産会社主導ですべての私道共有所有者から掘削承諾書を入手し、後から困らないようにする必要があります。

もともと住宅用ではない田畑や空き地を区画整理して販売している住宅分譲地で、コの字で囲まれているような道路は私道がよく見られます。東京23区内では物件の約半数が私道に面しているとも言われます。都心部では私道を受け入れないと選択肢が狭まってしまうかもしれませんが、できる限り避けた方が良いでしょう。

定期借地

土地は購入せず、土地所有者から期限付きで借りる方式です。土地を購入しないので価格が相場の60%程度だったりしますが、毎月地代を払う必要があり、契約期間満了後には建物を解体し更地にして返却しなければなりません。50年程の契約が多く、もし20年経過していたら残り30年しかありません。契約期間満了時に更新できれば良いのですが、満了時には土地所有者も変わっている可能性が高く、所有者のその土地に対する考えも変わっているかもしれません。更新できなければ更地にして返却し、新たな住居を探す必要があるという不安を抱えながら暮らすのは避けたいところです。

その2に続く

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