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日本の住宅事情

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住宅には様々な選択肢があります。持ち家と賃貸、戸建とマンション、新築と中古等々、それぞれ特性が異なります。家族構成やライフスタイルによって、駅が近い利便性が重要だったり、子供がいるため足音を気にしない生活がしたい、資産性が高いものが良い等、自身の重視する点にあった住宅を選ぶ必要があります。住宅については知っておくべきことがたくさんあるため何回かに分けて記事を書きますが、ここでは初めのテーマとして日本の住宅事情について書きたいと思います。

日本の住宅を取り巻く状況

日本は1990年代初頭にバブルが弾けた後、30年間景気低迷とデフレが続き物価も給料も上がりませんでした。近年新型コロナウイルスやウクライナ戦争によるコストプッシュインフレ(生産コスト上昇による物価上昇)が起きてきていますが、なかなか給料は上がっていない状況です。

コストプッシュインフレは特に都市部の住宅に顕著で、東京オリンピック開催による人件費・建材費の高騰、新型コロナの影響による木材生産の落ち込みや海上コンテナの不足、ウクライナ戦争によるロシアやウクライナ産木材の供給減に影響されたウッドショックと呼ばれる木材高騰、金融緩和による投資目的の購入増加など様々な要因で住宅価格が上がりました。

今や東京で住宅を買うなら夫婦でのペアローンでないと買えないような方も多く、とてもリスクの大きな投資のため慎重に支払い計画を立てる必要があります。日本の住宅は購入額より売却額の方が下がることが一般的ですし、また購入・売却時には各種手数料も生じるため、売却時には大きく差損が生じる結果となります。そうなると売却してもローンを完済できないため、「最悪ローンを支払えなくなったら売ればいいや」という考えが通用しないのです。ライフプランを立てて、いくらの物件なら購入可能か慎重に検討する必要があります。

日本の住宅の種類

日本には大きく分けてアパート、マンション、戸建てという三種類の住宅があります。アパートとマンションは法律上の明確な区別はありませんが、不動産業界の慣習で木造や軽量鉄骨造の2階建ての共同住宅をアパート、鉄筋コンクリートや鉄筋鉄骨コンクリート造で3階以上の高さがある共同住宅をマンションと呼ぶことが多いです。物件によっては木造でもマンションという名前がついている場合もあり、明確な線引きはありません。戸建は一世帯が独立して住んでいる家のことで、木造が一般的です。

それぞれの特徴を大まかに説明します。

アパート

アパートは家賃を安く抑えたい人向けの住宅です。木造や軽量鉄骨造で建築費が安く、マンションと比べてエレベーターなどの共用設備も限定的でコストがかけられていないため、家賃のほか共益費や管理費、駐車場代もマンションに比べると少ないことが多いです。設備や防音にこだわりがなく、とにかく家賃を抑えたい人向けです。

メリット

  • 家賃が安い。家賃が安いということは賃貸契約時の初期費用(敷金、礼金)や更新時の費用(家賃の1か月分)が抑えられたり、マンションと比べると同じ家賃で広めの部屋に住むことが可能。

敷金・・・部屋を借りる人が支払う保証金。賃料の未払いや部屋を損傷した場合の修繕に使われる。賃料の支払いや部屋の使用に問題がなければ本来退去時に全額返却されるものだが、退去時の修繕に借主がどこまで負担するか揉めることが多い。一般的には家賃1か月分。

礼金・・・貸主へのお礼として支払う。保証金と異なり贈与なので返金されない。一般的には家賃1か月分だが、近年は不要とされている物件も多く、また必要とされていても物件決定前の価格交渉で不要とできることも多い。

デメリット

  • 遮音性が悪く、隣人の話し声や上下階の足音など、音が良く通る。これにより騒音トラブルになりやすい。
  • 家賃が安いことから居住者の質が低くなる傾向がある。
  • オートロックの無い門や共通階段、通路で繋がっているため防犯性は高くない。

マンション

賃貸マンション(住戸を賃貸する)と分譲マンション(住戸を購入する)があり、分譲マンションの方が建築費も高く、設備が良いです。ここ10年程度、東京オリンピック開催による人件費・建材費の高騰や金融緩和による買主増加、投資目的の購入、都市開発等の影響で価格上昇が続きました。駅から徒歩10分以内であれば需要も多いため、資産性もあります。

メリット

  • 鉄筋コンクリートや鉄筋鉄骨コンクリート造のため、防音性や耐震性に優れる。
  • 駅や商業施設に近い利便性の高い物件が多い。
  • オートロックや常駐の管理人がいる場合もあり、セキュリティが高い。
  • 上下左右が他の住戸と囲まれているため、戸建てに比べて夏は涼しく、冬は暖かい。
  • 戸建に比べて価格が下落しにくい。(物件によっては価格が上昇する場合もある)

デメリット

  • アパートに比べて遮音性が高いものの、集合住宅のため周囲の住戸との騒音トラブルが発生しやすい。
  • 戸建に比べて面積が狭い。
  • 賃貸の場合、アパートに比べて家賃が高い。分譲の場合も、人気物件は価格が高い。
  • 分譲の場合、住宅ローン以外に管理費や、修繕積立費、駐車場代がかかる。
  • ペットを飼ったりリフォームする際に管理組合の許可が必要な場合がある。
     

管理費・・・マンションの共用部分の維持、管理のために使われる。エレベーターのメンテナンス、エントランスや廊下の電気代、管理組合の運営費、管理会社への委託費等。毎月1万5千円程度。

修繕積立費・・・定期的に行われるマンションの共用部分の修繕のために使われる。外壁塗装や屋上防水工事、エレベーター設備の交換等の長期修繕計画に基づき積み立てられる。毎月1万2千円程度。

戸建

建売住宅と注文住宅があり、建売住宅は不動産会社が土地を購入して建物を建築し販売している住宅です。注文住宅は個人が購入した土地に、自由に設計をして建物を建築する住宅です。建売は数棟まとめて作られることも多く、似たような設計、似たような材料で建てられるので、注文住宅よりコストが安いです。戸建は住宅価格に土地代の占める割合が高いですが、一年毎に不動産価値が下がる建物代に対し、土地代はずっと変わらないため、土地代については資産性があります。

メリット

  • 他の住戸と隣接していないため、騒音トラブルが少ない。
  • 駐車スペースが確保されていれば駐車場代がかからない。
  • マンションに比べて面積が広い。
  • 近所付き合いができる。特に開発分譲地に複数棟が立つ場合は、子育てする同世代が集まり付き合いやすくなる。
  • 注文住宅なら好きな間取り、デザインにすることができる。建売でも壁紙や床の色、建具の仕様等を選べるタイプあり。
  • 庭付きならガーデニングや子供の遊具を設置することができる。
  • ごみが戸別収集の地区なら、家の前に出すだけで良い。
  • トイレが一階、二階と二つあることが多い。

デメリット

  • 屋根や壁の塗装や庭の草むしりの維持管理から、漏水や排水管の詰まりのトラブル対応まで、全て個人で行う必要がある。
  • 敷地に入ると人目につきにくいため、防犯性が低い。
  • 駅から離れていることが多く、遠い場合はバスに乗る必要がある等、利便性が低い。
  • 夏は暑く冬は寒いため、光熱費が高い。

アパート、マンション、戸建てどれが良いのか?

アパートはとにかく遮音性が悪く、特に小さな子がいる子育て世代にはおすすめしません。木造でも軽量鉄骨造でも遮音性能はあまり変わりません。夫が独身の際にアパートに住んでいたのですが、隣家の話し声が聞こえたり、驚いたのは下の階の足音が上の階まで響いてきたことでした。子育て家族では子供の足音を気にして一階を選ぶ方も多いですが、それでも意味がないということです。赤ちゃんがいる家庭では泣き声にも気を使うことになります。

マンションか戸建かは、その方のライフスタイルや何を大切にしたいかで選べば良いと思います。駅の近さや資産性を求めるならマンションですし、子育て世代で騒音トラブルのリスクを減らしたいなら戸建です。私は当初夫の会社が借りている社宅扱いのマンションに住んでいましたが、子供の足音がうるさい、ベランダに布団を干すと埃が落ちるといった下の階からのクレームがひどく、大変な生活ストレスでした。そのため新たな住居は戸建にしました。

暮らしはお互いの気遣いが大切

日本では隣人と顔を合わせたり挨拶をすることも少なく、人間関係が希薄です。さらに不寛容社会と呼ばれるように、神経質で周囲に厳しいです。そのため些細なことで隣人トラブルになることが非常に多く、足音や赤ちゃんの泣き声、テレビやオーディオの音等の騒音トラブルをはじめ、ごみの分別や曜日を守らないといったごみ出しに関するトラブルや、たばこの煙で洗濯物に匂いがつく、柔軟剤の匂いが強いといった匂いのトラブル等々、様々な隣人トラブルが起こります。その中でも騒音は最もトラブルになりやすいので、特に集合住宅志向の方は建物の遮音性や過去の近隣トラブル有無を確認する等、慎重に選ぶ必要があります。一度トラブルになると生活に制限が生じるため、その後の生活が苦しくなります。

私は現在戸建に住んでいますが、過去のマンションでのトラブル経験をもとに、特に音には慎重を心がけて生活しています。マンションと違い足音は気にする必要がなくなったのですが、子供の叫ぶ声が大きかったりするので、春や秋の窓を開けたくなる時期でも閉めています。また乾燥機は夜9時以降は回さないようにしています。そこまでする必要はないのかもしれませんが、今の幸せな暮らしを壊したくないため、できることはしたいと思っています。でも以前の子供の足音を注意する暮らしから脱却できただけで全然窮屈ではありません。そんな生活のおかげか今は近所の方とは立ち話をしたり、土産を交換したり、関係も良好で幸せに暮らせています。

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